色の組み合わせで読み間違いをなくす!?
視覚から考えるヒトに優しい社会づくり
「見える」とはどういう状態かを知ることから
視能訓練士は、全ての国家資格の中で取得者が2番目に少ない、希少なスペシャリストです。
視能訓練士はおもに病院の眼科に勤務し、目に関するあらゆる検査を行います。
眼科は他のどの診療科よりも検査項目が多く、扱う検査機器は100種類を超え、実は診断や治療のための検査のほとんどは、視能訓練士が行っています。
そのため講義では、検査機器の扱い方から眼疾患に至るまで、専門的な知識を習得します。
視能訓練士の国家資格取得のための勉強も行いますが、さらにステップアップを目指し、ゼミを開講しています。代表的なゼミとして、視野が狭くなるなど、見えづらくなることで不自由を感じる「ロービジョンゼミ」や、標識などの識別が難しい、色の見え方に特性を持つ人が、日常生活でどのような不便を感じているのかを知る「色彩ゼミ」を開講しています。
これらの講義の中で、「見えづらい人」にとって、どのような不便や危険が身に起こるのかを理解していきます。そのことでますます視能訓練士の役割も考えていきます。
色のバリアフリー・QOVの向上に向けて。
見えづらい「ロービジョン」の方は、後天的に視力が弱くなったケースが多く、ゼミでは、QOV(Qaulity Of Vision)=視覚の質の向上のために何ができるのか、さまざまな方法を学びます。
例えば、まぶしさを遮る特殊なサングラスや、遠くを見るための補装具についても実際に使ってみることで、どのように見えるのか体感することを大切にしています。その上で、ロービジョンの方と一緒に交通機関を利用したり、買い物の支援をする実習も行い、見えづらい人がどのような不自由を感じているのかを知ることができます。
色彩ゼミでは、全員が「色彩検定」のユニバーサル級の資格取得を目指します。
これは、生まれもった「色覚特性」などによって、見えづらい色があったり、色の区別がしづらい人のことを理解するためです。
理解をした上で、講義では「色覚特性」のある人は、路線案内図や安全標識はどう見えているのか、実際の標識は誰もが色の区別ができるように作られているかを調べたりしています。
多様な視機能に配慮して、そこにいるすべての人に伝える力を学ぶ
特に「色覚特性」は、見分けられる色が人によって違うなど、個人差があります。
医療従事者として視能訓練士の仕事は、「治す」ためや「機能向上」のためだけではなく、不自由なく日常生活を送るためのアドバイスもあります。
その人の色の見え方の特性を教えてあげることで、見分ける術を得られることも実習の中で学びます。
「病気」ではなく「特性」と捉える今の時代で、アドバイスをするためには、時にデリケートな部分に踏み込まなければならないこともあります。「患者さんと密に関わり、一緒にいる時間が長いのが視能訓練士」と言われています。
そのために重要なのがコミュニケーションの取り方です」実際の講義の中でも、「聞く力」「伝える力」といったコミュニケーションの取り方も実践しています。
スマートフォンの普及などで、大人だけでなく、子どもたちも目を酷使することでの弊害も増えています。
「見えづらい」をどう解決するか、視能訓練士への今後の期待は大きく、そのための実践に基づいた学びは大いに役立つはずです。